ABOUT THIS PROJECT

Project summary

プロジェクト概要

ORIGAMI (ORganizatIon of research Group on Advanced deployable Membrane structures for Innovative space science) Projectは、超小型人工衛星を使った「宇宙実証」を一つの開発手段として用い、将来の超小型~大型人工衛星の基盤となりうる先進的な宇宙展開構造物を若手研究者が中心となって創出していく、そのような研究・開発拠点を形成することを目指します。

2014年度に文部科学省 宇宙航空科学技術推進委託費 宇宙科学研究拠点形成プログラムの受託を受けて活動が開始されました。後述の通り、その成果の一部として、2019年1月に3UキューブサットOrigamiSat-1の打ち上げ・運用を実施しました。打ち上げ以降も、「自分たちの手で衛星を作りながら、革新的な宇宙構造システムを作り上げていく拠点」として、ORIGAMI Projectはさらに発展を目指します。

参考:
平成26年度 文部科学省 宇宙航空科学技術推進委託費 報告書(文部科学省サーバへのリンク)
OrigamiSat-1/FO-98の打ち上げ・運用報告(2019年9月)

宇宙実証1号機:3U CubeSat 「OrigamiSat-1」

ORIGAMI Projectのメンバーは、2014年末より1機目の超小型の人工衛星(3Uキューブサット)「OrigamiSat-1」の開発を開始しました。先進的な展開構造の実験を、CubeSatというプラットフォームを用いて実際に宇宙でやってしまおう、というわけです。そうすれば、地上の真空槽内では展開が難しいサイズの構造も、微小重力下で展開することができます。こうした「CubeSatを用いた宇宙での実験」を、さまざまな研究者が自分たちで行えるような拠点を作れば、次々と革新的な展開構造が生まれることにつながるに違いありません。およそ4年間の開発期間を経て、3U CubeSat OrigamiSat-1は、JAXA(宇宙航空開発研究開発機構)のイプシロンロケット革新的衛星技術実証1号機の実証テーマの一つとして、2019年1月18日に打ち上げられました。



OrigamiSat-1が目指すのは次の3点です。
  1. 太陽発電アレイや平面アンテナを薄膜上で実現し、大幅な構造の軽量化・高収納率化を可能にするブーム・膜複合構造(ORIGAMI Projectが提案)による「多機能展開膜構造」を宇宙実証する。(多機能膜展開ミッション)
  2. 3Uキューブサット上で各種展開構造物の宇宙実験を可能にし、今後とも継続的に宇宙実証を活用した技術開発を行っていくための「実験プラットフォーム」を構築し、その宇宙実証を行う。(OrigamiSat-1の3Uのうち、実験プラットフォーム部分が2Uサイズ、供試体が1Uサイズ。)(宇宙実証プラットフォーム開発ミッション)
  3. これまであまり活用されてこなかった5.8GHz帯でのアマチュア無線衛星通信技術を確立し、同周波数帯の普及に貢献する。さらに薄膜上へのアンテナ貼付を実現する。(アマチュア無線ミッション)
  4. さらに、OrigamiSat-1を開発・運用するという活動を通して、大学が持つ技術シーズを企業の新製品へつなげ、さらに起業家精神を持つ若手人材を育成する、「宇宙展開構造物 研究開発拠点」を醸成していきます。

OrigamiSat-1の衛星の機器構成,およびミッションシークエンスを以下に示します.

2019年1月18日の打ち上げ後、6日半の間、東工大地上局で衛星運用を行うことができました。しかしその後衛星からの信号が途絶し、衛星状態を確認する初期運用以降のミッションが実施できない状態にあります。不具合原因を特定する活動を行いながら、衛星の復旧を待ちます。また同時に、OrigamiSat-1開発の知見を知識化すること、そして次号機の設計検討すること、を実施しています。


OrigamiSat-1/FO-98の打ち上げ・運用報告(2019年9月)
プロジェクトの背景:手が届く「宇宙実証」

©東工大松永研

「ORIGAMI Project」を開始した「思い」は以下のようなものです。

かつて、宇宙へモノを送るのには多大なコストがかかりました。そうなると、地上で数々の試験をきちんとくぐり抜けた機器だけが衛星に搭載されることになります。展開構造物(ロケットの中では小さく折り畳んでおいて、宇宙で広げて使う構造)はたいてい衛星ミッションの成否に直接関わりますので、先進的な設計を新たに採用することは特に難しいです。何しろ、宇宙の微小重力・真空下で確実に展開することを、重力・大気の影響の強い地上で試験するわけですから、どうしても保守的な設計にならざるを得ません。

2003年、日本の東京工業大学と東京大学が、世界に先駆けて超小型衛星CubeSat(10cm×10cm×10cmサイズ)を成功させたことで、宇宙開発の歴史は大きく変わりました。大学の学生・研究者が自らの手で衛星を作り、本物の宇宙環境で実験ができる時代がやってきたのです。宇宙での実証実験を効果的に技術開発の過程に取り入れることができれば、これまで保守的にならざるを得なかった展開構造物の設計を、もっと簡素に、もっと軽量に、できる可能性があります。

シミュレーション技術との融合

©JAXA

2010年、日本発の革新的な展開構造物の宇宙実証が世界を驚かせました。JAXAが打ち上げた小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSが、14m四方の正方形の薄膜を、スピンの遠心力で展開することに成功したのです。IKAROSは太陽からの「光の圧力」を受けて加速・減速する世界初の惑星間「ソーラーセイル」となりました。厚さ7.5μmのセイルの上に、薄膜太陽電池や液晶デバイスなど、複数の薄い機器を貼り付けていたのですが、これらが宇宙で機能することも確認できました。ORIGAMI Projectのメンバーの多くは、このIKAROSの構造システムの開発に関わっていました。

なぜ、IKAROSはこんなにも革新的な展開構造を、世界に先駆けて実現できたのか? その1つの大きな要因に、開発の過程でシミュレーション技術を積極的に用いたことがあります。「スピンの遠心力で大きな薄膜が宇宙で展開する」挙動を、スーパーコンピュータも使用しながら、シミュレーションで予測したのです。具体的には、多粒子法と幾何学的非線形有限要素法という2種類の方法を用いて、様々な数値解析モデルを作成して計算し、「この設計で大丈夫か」ということを入念に確認しました。

ただ、シミュレーションの怖いところは、コンピュータの計算結果が、本当に宇宙空間で起こる物理現象にどのくらいの正確さで対応しているのか確信が持てない、というところにあります。IKAROS開発チームは、地上でできる様々な要素実験で、自分たちのシミュレーションの正確さを確認しながら進みました。ただ、これらの要素実験も重力の影響を受けてしまいますし、真空槽を用いると大型の実験装置を使うことが難しくなります。もっといろいろな実験データがあれば、もっとシミュレーションの正確さを高めて、もっと攻めた設計ができるのに、と思うこともしばしばでした。

ならば自分たちの手で、新たな技術を宇宙で試す衛星を作ろう。そのようにしてメンバーが集い、「ORIGAMI Project」を始めました。

About Member

メンバー

ORIGAMI Projectは、文部科学省の平成26年度宇宙航空科学技術推進委託費・宇宙科学研究拠点形成プログラムの採択課題「革新的宇宙科学を切り拓く先進展開構造の研究・開発拠点形成」として開始され、以下の機関により進められています。




協力機関・協力者の皆様:

東京工業大学 松永三郎 研究室
東京工業大学 コバルト照射実験施設
NPO法人 大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC)
NPO法人 日本アマチュア衛星通信協会(JAMSAT) 金子明 様
JAXA宇宙科学研究所 様
大鉄精工 株式会社 様
帝京大学 久保田弘敏 先生
株式会社アイクォーク 田中健太 様
熊本大学 波多英寛 先生
株式会社レヴィ 南部陽介 様
福井県工業技術センター 様
その他、多くの皆様

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info@origami.titech.ac.jp